15分後、トッドは仕事を終えて、帰える準備をしていました。
エプロンを外して、前回のクリスマスプレゼントの大きなウインドブレーカーを着ます。
実のところ父親からのお下がりで、全く彼には合っていなくて腿まですっぽり来ているし、
ポケットには穴があいています。
それでも11月の冷たい風の中で迎えを待っている時には、無いよりはずっとましでしょう。
その時「荷物係り、6番レジスタへ、荷物係り、6番レジスタへ、
お客様のお手伝いを」とスピーカーから流れました。
何てことでしょう。呼ばれている「荷物係り」というのは彼のことです。
もう終業なのに酷いや!4時間みっちり働いたんだぜ、少年労働法はどうなってんだ?
トッドは機械から流れる呼び出しを無視しようかどうしようかと、迷いました。
裏からこっそり抜け出すこともできるでしょうが、どうせ迎えまではまだ時間が有ります。
じっと待っていても良いのですが、クビにはなりたくありません。
面倒な仕事を言いつけられたら「時間だから」と言えば良いやと決めました。
反抗心で少し元気が出たので、遅番担当ガミガミおばさんのマクジリスの待つ
6番レジスタへと向かいました。
驚いたことに、レジスタの横で待っていたのは、ウエストブルックさんでした。
彼が近づいていくと、ウエストブルックさんは微笑みかけ、
マクジリスおばさんは意地悪そうに見ています。
もちろん誰でも意地悪く見るので、気にはしませんけど。
「こちらのお客様のお荷物をお積みして」とマクジリスおばさんの指図に、
トッドはわざとらしく自分の手首を見ます。時計はしていないのですが。
マクジリスおばさんには、そのイヤミが通じたようです。
「終業なのは判っているけど、お母さんから電話があったのよ。
彼女の店が臨時監査で、迎えに来られないって。
お父さんに電話して、迎えに来てもらったら」と。
けっ、そいつは素晴らしいね!金曜の夜ってことは、
親父はその辺の飲み屋で出来上がってら。
あちこち電話して、見つけたところで、危なくて運転なんて頼めやしねぇや!
おばさんは勝ち誇ったように「どうせまだ帰れやしないんだから、
その辺でうろうろしてお客さんの邪魔をしてるくらいなら、
ウエストブルックさんの荷物を手伝ってあげてもバチは当たらないよ」と。
これだけやって、サッサと帰りなよ、という調子ですが、行くところがありません。
「トッド君、一緒に家に来たら?」とウエストブルックさんが助け舟を出してくれました。
「しばらくアーニーのところに来てくれてないって話してたとこだし。
まだ図書館かもしれないけど、そのうち帰って来るわよ。お家に電話するのはそれからで」
確かに飲み屋に電話を掛け回って父親を探して、寒い中で迎えを待つよりは
ずっと良さそうです。アーニーが嫌がらなければ良いんだけど...
「そうですね。寒いとこで待ってるのもキツイですから」
「そう。何か持ち物は?取って来なきゃいけない?」
「いえ、準備できてます」
「じゃ、行きましょう」
大胆にミニスカートを翻して、ショッピングカートを押して駐車場へと
歩き出したのを、慌てて追いかけるよう外へ出ると、冷たい空気が肌を刺すようです。
風はすっかり冬になっています。
アンジェラ・ウエストブルックは、コートも羽織らずに、急ぎ足で車に向かいます。
スカートの中まで冷えちゃってるんじゃないかな、などと思いながら付いて行くと、
茶色のステーションワゴンのところで立ち止まって、ハッチバックを開けました。
トッドは自分の仕事とばかり、食料品の袋をカートからトランクに移します。
大きなスイカもどうにか一人で積むことができました。
「今日助けてもらうのは二回目ね。お返ししなきゃ」と微笑みながら言われて
「良いんですよ。車に乗せてもらうだけで十分ですから」とトッドは謙虚に応えました。
「それじゃ足りないわ。何か他のものを考えないと。
世界中で今一番欲しいものは何?私にできることはあるかしら」
トッドは色あせたジーンズの内側で警報が鳴ったような気がしました。
この素晴らしい女性が駐車場でひざまずいて、彼を口にくわえる姿を想像してしまったのです。
頭を振って妄想を追い払って、ウエストブルックさんを見たのは間違いでした。
寒さのせいで、黒いセーターからは2つの乳首が浮き出しています。
本格的に勃ってしまいました。気付かれていないと良いんだけど。
きっと、彼女はさっきみたいに平気でしょうけど、トッドの方は...
「何か思い付いた?」
もう一度同じ情景が...今度は柔らかな舌が円を描いて...
「トッド君?」
「地球からトッド号へ...応答願いま〜す!」と微笑みながら彼を突付きました。
トッドが我に帰ると緑の瞳が瞬きしながら、楽しそうに彼を覗き込んでいます。
何を考えていたのか、気付かれた筈はないけど!
慌てて「ご、ごめんなさい、ウエストブルックさん、ちょ、ちょっと考え事してて。
え〜と、く、車に乗って良いですか?寒くなってきたみたいで」
彼女はトッドを少し眺め回して、彼が話題を変えようとしているのに気付いたようです。
追求はせずに、車のキーを開けました。
車に乗り込むと、トッドはとにかく落ち着こうとしました。
大きなウインドブレーカーがジーンズのふくらみを隠してくれてはいましたが、
家に着いて上着を取るまでには治まっていなければなりません。
でもウエストブルックさんが邪魔をしています。
長い脚がペダルを踏む度に、黒いミニスカートを跳ね上げています。
太腿の筋肉がパンティストッキング越しに踊っています。
目を閉じてみても妄想に逆戻りするだけですから、このセクシーな女性の側で
高まりを鎮めるのは無理のようだ観念しながらも、少しもぞもぞ始めました。
右折灯を上げてゆっくりと道路に出ながら「トッド君、今日は落ち着かないぢゃない」と。
「トイレに寄らなくて大丈夫?」
大丈夫ですと言い掛かって、考え直しました。
ウエストブルック家に着くまでには鎮めなければならないけれど、
自然解消は無理。でもトイレに行けば、この問題は一挙解決。
以前、学校でこの手を使ったことがあります。
「済みません。え〜と、実はトイレに行きたかったんです。
ガソリンスタンドかどこかで止めて頂けますか?」
「家まで待てない?」
「あ、あの、ちょっと無理みたいです。済みません」とぎこちない言い訳。
「良いのよ。この先にサービススタンドがあるから。
そこで、あなたの悩みの種を出しちゃってちょうだい」と親しげに笑いながら言いました。
トッドが訳を知っているかのような彼女の言葉に赤面している間に、車はスタンドに入りました。
アイドリング状態になると、トッドがすぐにドアを開けて「少し掛かるかも知れません。
知らないところだと落ち着けない方で」との布石に
「判ったわ。ごゆっくり。どうせガソリンも入れてくから」と。
トッドは、ミニスカートの太腿を横目で最後の一瞥をくれながら
「済みません」と言って、ステーションワゴンから建物の脇にあるトイレの方に向かいました。
ドアを開けて、トイレに入って行きます。