「恋人は美味なる多面体」by ひの丸
「まあまあな店だったよな。この後どうしよっか?」
「うーん、別に…」
僕と由希は付き合って二年になる恋人同士。
良い意味でも悪い意味でも、お互いを知り尽くした仲だ。
が、ただひとつ。
彼女にどうしても打ち明けられない秘密があった。
それは、僕の性癖の話。
女性の手でイカされるのが好き…というか、イカされてみたいということ。
勿論、ビデオからの知識しかないけど あの焦らすような目つきで、いやらしい言葉を
囁かれながら執拗に繰り返される上下運動は 他のどんな
シチュエーションよりもたまらなく興奮してしまう。
けど、女性に手でしごかれ、その快感で絶頂をむかえるという
何とも男本意なこの性癖は、何というか彼女に対して後ろめたかったのだ。
とはいえ、付き合いだして二年が経った今となっては その感情も少しおさまりつつある。
(言って…みるかな?)
由希という女性が、僕に至上の快楽をもたらす天使になるか
はたまた、軽蔑され『ハイサヨナラ』か…まあ少し極端だが。
優柔不断な僕としては一大決心だ。
もっとも、後押ししたのは思いやりでも責任感でもなく
未だ知り得ぬ快感を求める一心からなのだが…。
「なあ由希、ちょっと話あるんだけど…」
「ん?何よ?」
「ちょっとコーヒーでも飲まない?」
怪訝そうな表情の彼女。
そりゃそうか。
打ち明けた途端笑われるかな?
それとも明らかにひかれたり?
「いや…実はさ…」
いろんな葛藤はあったが、僕はコーヒーに口をつけることもなく
ついに全てを彼女に全てを打ち明けた。
自然と全部耳打ちになったが…。
「……………」
恐いくらいに無表情のまま、僕の目を見据えて何も言葉を発しない彼女。
(うわ…こりゃツライや…)
「いや、まぁそのなんていうか…隠し事はよくないって思ったからさ!ははは…」
やはり失敗だった…。
「そうだよ。隠し事はダメだよ。で、行く?今から…」
「え?行く…って?」
ここはラブホテルのエレベーター内。
僕は怒濤の展開に呆気に取られながら 頭上の階数表示を眺めている。
由希には僕の性癖が理解できたっていうのか…?
こうもうまい具合に事が進むと、不思議と疑心暗鬼になってしまう。
と、不意に彼女に唇を奪われた。
「んっ…!?」
由希は舌を絡ませガンガン攻め込んでくる。
僕は不意を突かれながらも必死で応戦しつつ 由希の唇の感触を楽しんだ。
「ん……もう…もっと早く言ってくれればよかったのに。 悶々としてたんでしょ?」
「あ、ああ…そうなんだよ…ははは。」
「じゃあその溜まってたもの、あたしが今日全部出してあげるね。
ふふ…ちょっと楽しみー。」
なんて理想的な展開…
しかも今の由希からは 僕のツボである“痴女”的な雰囲気を十分に感じる。
「ははは…何かオレすぐイッちゃいそうだよ…。」
実際、僕の股間は既に限界にまで膨れ上がり
ズボン越しにも隆起したものがはっきりと見えてしまっている。
「いいじゃん?何回もイケるんだし…うふふ。 あ、ほらココだよ。」
部屋に着いた。
木目の壁に囲まれ、ロッジ風にまとめれた部屋。
いやらしい雰囲気は全く感じられない部屋だった。
だが、そこで行なわれた由希のフルコース。
見たことのない彼女の顔、声、そして指…
何の雰囲気もないこの部屋は 彼女の手によって悦楽の空間へと姿を変えた。
今思い出しただけで、またあの快感の連続が甦ってくるようだ…。
つづく