土曜日、午後5時ようこはいつものように仕事を終わり、店の前に出てきた。

ただ、今日は普段と違い少し機嫌が悪かった。それは、最後に当たった客が最悪だったからである。

...「ふぅ、全く頭に来ちゃう。人の体なんだと思っているのかしら。お金さえ払えばいいとでも思っているのっ!」

...「こんな日は、お酒でも飲んで早く寝ちゃおうかしら。まったく頭にくるったらありゃしない。」

独り言のようにつぶやき、少しでも気を落ち着けるため、お気に入りのたばこに火を付けようとしていたが、店の入り口の前でドスンとなにかにぶつかり尻餅を付いてしまった。

「いた〜、何よ全く。本当に今日はついていないわ」

と顔を上げると、そこには尻餅を付いて首を回している男がいた。

「あんた、どこ見て歩いてるの!服が汚れちゃったじゃないの。どうしてくれるのよ。」

と捲し立てた。

あらためてその男を見ると、すっと立ち上がり近くに寄っていった。1発蹴りでも入れてやろうと思ったからである。

男はまだ首を回している。どうやら、ようこよりダメージが大きいようだ。ようこは男の髪の毛をつかみ顔をこちらに向けて蹴りの体制に入ろうとしたところ、あれっ、と思いよく顔を見直した。あまりにも幼い顔をしていたので半ば拍子抜けして

「何で中学生がこんなところをウロチョロしてるのよ。さっさと立ちなさい」

男、いやその少年は上を見上げたままなかなか立ち上がろうとはしない。ようこはそんなにダメージが大きかったのかと心配になり、顔をのぞき込むようにすると、少年の視線がスカートとふとももあたりを行ったり来たりしていた。普段のようこならそんなことぐらいなんとも思わないが、今日は虫の居所が悪かったようだ。

「どこ見てるんだ、このガキッ!」

と、一発顔に平手を入れた。

ようこは大人げないとは思いながらも言った。

「さっさと帰りな!」

少年の目は涙目でこの暴挙を訴えるようにこちらを見ていたが一言ごめんなさいと謝った。

少年は立ち上がろうとして地面に手をついたところ、懐に忍ばせて置いた雑誌が落ちた。いわゆる風俗案内誌である。ようこはそれをすぐ手に取り

「まったく近頃のガキは色気好きやがって」

と吐き捨てるように言いその雑誌を何の気なしにページをめくっていった。

すると2,3枚ページの折れているところがあった。ようこはそのページを見て目を丸くしてはっと息をのんだ。そこには店の紹介ページと共に自分のプロフィールが書かれていたのである。大きなヌード写真入りで。

「まさか、この子」

と考えを巡らせ、その少年に問いかけた。今度はなるべくやさしく。

「もしかしたら、このお店にきたのかしら?」

と店の看板を指さし少年に聞く。少年が軽くうなずくとようこは

「子供が来るところじゃないのよ」

と諭すように言った。ふと、気がついたのだが、さっきまで爆発しそうな怒りがいつの間にか消えかかっている。ようこは少年に聞いた

「年はいくつなの」

と聞くと、少年は18歳と答えた。ようこにはとてもそんな歳には見えなかったがとくに気にせず

「何でこんなところにいるの?」

と分かり切ったことをあえて聞いてみた。

少年は今日18歳になったので前から楽しみにしていた風俗を体験してみたかったと答えた。さらにようこは

「このページの折れ曲がっているところの写真私だってわかる」

と、聞くと少年は3回も首を縦に振って答えた。

ようこは少年と話しているうちに爆発寸前の自分が消えていることに気がついた。それどころか18歳になったその日に会いに来てくれたその少年に何か愛おしさを感じ始めていた。

それと同時に、日頃のストレスをこの子で解消したいなどと、いたずら心が頭を持ち上げてきたのである。ようこは少年に優しく話しかけた

「今日18歳になったと言うことは、まだ高校生よね。高校生がこういうお店に来るのは法律で禁止されているのよ。残念だけど、警察に通報しなければならないわね。」

と、うそをついた。その言葉に少年は、血の気が引く思いがして、許してくれと懇願した。

「ダメよ、ちゃんと法律は守らないといけないもの。さあ近くに交番があるわ、さあ行きましょう。」

と、手を引こうとした。少年は何度も何度も頭を下げ許しを請うてきた。ようこは心の中で舌を出しながら

「ああ、おもしろいこんなにあわてちゃって。なんかこの子かわいくなってきちゃった。もっとからかってみようかしら」

今後の展開の楽しみに笑みを浮かべ

「許してあげてもいいけど、悪い子はおしおきを受けるのは当然よね」

と少年に問いかけた。少年は首を横にふり、イヤイヤをしている。

「そんなに警察は嫌なの?」

となかば当然のことを聞き

「じゃ、代わりに私がお仕置きをします。」

と表面上毅然とした態度で冷静に言った。少年は何とか助かったと思いすぐさまその言葉に同意した。

「それじゃ、お仕置きする場所を決めなくちゃね。」

と、ようこは

「近くに私のマンションと、駅を一つ行ったところに、あなたのような子を懲らしめるための部屋があるの。どちらに行きたい。」

と少年に問いかけるふりをして、ようこは少年の手を引き

 

自宅のマンションに向かった。

 

電車に乗るため近くに駅に向かった。